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認知症ケアの現場レポート(取材:2017年6月4日)

ローレンスケア聖蹟桜ヶ丘』
(工藤建設株式会社)

強い帰宅願望と、杖を振り回してホーム内を徘徊

Aさん84歳男性 要介護1

 A様は若いころから自営業で、奥様と二人暮らしをしていました。気の良い江戸っ子気質で、毎日のように夜の街へ繰り出しては周りの人たちにお酒を振る舞うなど、良き時代を過ごしておられました。が、加齢とともに糖尿病を患い、認知症の症状が現れてきました。介護認定を受け、デイサービスを利用して在宅介護となりました。

 しかし、奥様はご自身の通院や夫に代わる仕事で家を空けることも多く、一人で過ごすことができないA様は、自転車やタクシーで出かけ、持っていたお金を使い果たし傷だらけで保護されるなど、昼夜を問わず徘徊を繰り返しました。奥様は心身ともに疲れ果て「フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘」へ入居を決めたのです。

 入居初日から帰宅願望が強く、身支度をされ「さあ、帰るぞ、タクシーはまだか」と大きな声でスタッフに詰め寄ります。そのたびに「今日は混んでいてタクシーがつかまらないようですね」と夕食へはお誘いできるものの、食後はすぐにフロアを歩き回り、居室の扉を力任せに開け閉めしたり、杖を振って目につく設備をカンカンと叩いたりしていました。

 一度は就寝されても、目が覚めると再度同じ行動をなさいます。そればかりか、目につくコード類をすべて引きちぎり、排水溝に物を詰めて洗面台やリビングが水浸しになっていたことも何度かありました。

 スタッフはA様に辛抱強く付き添い、見守りました

 他のご入居者はA様の行動に眉をひそめることはなく、スタッフに「今日も大変ね、怪我しないようにね」とねぎらいの言葉をかけてくださいます。それは「フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘」のスタッフが、すべてのご入居者に抑制をおこなわずに接してきたことを知っているからかもしれません。

辛抱強く気持ちに寄り添う。信頼し受け入れてくださるまで待つ。

 ホームでは、A様の行動を辛抱強く見守りながら行動の理由を探るため、奥様から話を伺い、介護スタッフ・ケアマネジャー・看護師・機能訓練指導員など全職種によるカンファレンス(会議)を繰り返しました。その結果、行動理由が少しずつ見えてきました。

 A様はかつて、管理をする仕事につかれていました。つまりホームでのA様の行動は仕事柄、毎日のように管理している場所にでかけ、安全のため設備点検を行っていたのです。行動力と責任感の強い方でした。そこで、スタッフは引き続き危険の無いように見守りながら、壊れては困るものに「点検済み」「工事中」などの張り紙をし、一緒に点検をして回ることで、少しずつ納得して下さるようになったのです。この時、入居から半年が経っていました。その後A様の関心は「ホームの設備(ご自身の仕事)」から「人」へと移ります。スタッフやご入居者と話をするようになり、レクリエーションにも参加。もともと人や賑やかなことが大好きだったA様は、盛り上げ役として活躍、皆様から愛される存在になりました。

トイレへ行きましょうか?

 ところが、夜間部屋で過ごすことができるようになると、今度はトイレ以外での放尿が始まりました。タイミングを見計らってトイレへ誘導しようとすると、手を振り上げ大声で拒否されます。自尊心を傷つけぬようひたすら後始末と保清に努めました。日を経て、その姿に「あんたたちも大変だな」と声をかけてくださり、徐々に「トイレへ行きましょうか?」の声かけに「そうだな」と応じていただけるようになったのです。

 そして一年が経つ頃、面会にいらっしゃる奥様に対しても「俺はここにいるからお前は気をつけて帰れよ」と、帰宅願望はなくなりました。

「自宅で手料理を」奥様の希望が叶う

 すっかりホームに慣れたころ、A様は自室で転倒し左大腿骨を骨折し入院。

 病院での生活の中でA様は、ベッドから降りようとしたり、大声で抵抗されたりしたため、治療のための抑制を余儀なくされました。暴れるA様に連日付き添っていた奥様は「拘束されるとさらに興奮するのです。このままでは身が持ちません」と苦悩を伝えてくださいました。

 ホームに戻る際には、下肢力の低下もあり再度転倒や骨折のリスクがあることを十分に話し合いました。無事に退院したときA様は、ホームに着くと「ただいま。帰ったぞ。」と皆様に笑顔で迎えられました。その後も転倒への気配りとケアを受けながら毎日を穏やかに過ごしています。

奥様の手料理

 入居当時、ホームでの生活継続の不安や夫とのコミュニケーションに自信を失っていた奥様ですが、今では「私の手作り料理を夫に食べさせたい」と計画を立てるなど、A様・家族・スタッフ、皆が良好な関係になりました。スタッフ付き添いで自宅へ外出したときには、A様は出てくる料理を「うまいうまい」と召し上がり奥様を喜ばせました。そして半日を過ごされると「さあ、帰るぞ」とおっしゃって、奥様に笑顔で見送られホームに戻りました。

 認知症の混乱を共に乗り越え、やっとA様にとってホームが居心地のよい場所になったのです。

岡園貴子(フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘ホーム長)

スタッフ全員による「明るい介護」で「その方の安心できる居場所」作り

岡園貴子(フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘ホーム長)

 当ホームでは、重度の認知症の方も積極的に受け入れています。専用フロアを設け、手厚く見守れる環境を作っています。

 A様に関わる中で学んだことは、ひたすら見守り、寄り添い、諦めずに、受容し続けることでした。介護スタッフだけではなく、他職種と協働しともに考え、一つひとつ丁寧に解決方法を探っています。

 ご入居者お一人おひとりにとって居心地のよい環境をつくるためには、時間をかけて信頼関係を結ぶことだと考えています。それを実現するには、知識や経験だけでなく、「明るい介護」ができる人間力のある人材育成が必須です。

 たとえ認知症になったとしても、A様はA様そのものです。あらゆる側面からその方を中心に、ご家族、スタッフ、多職種すべてが、安心できる居場所を提供することを使命と考え、ケアをする側も、ケアを受ける側も、それを見ている周りの人もみんなが幸せな気持ちになれるホームを目指しています。

フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘 介護付有料老人ホーム(一般型特定施設入居者生活介護)
フローレンスケア聖蹟桜ヶ丘
介護付有料老人ホーム(一般型特定施設入居者生活介護)
所在地 東京都府中市日新町5-53-1
最寄駅 京王線「中河原駅」よりちゅうバス(四谷六丁目ルート)乗車
「日新町5丁目」バス停下車徒歩0分
運営会社 工藤建設株式会社
0120-86-8165
0120-86-8165