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【第4回】レイル
(監修:山田 実先生)

フレイルとは「元気な状態と介護が必要な状態の中間にある状態」を指す新しい言葉です。今までは、老化による衰えは避けられない、という考えが一般的でした。しかし最近の研究ではフレイルを予防することや、フレイルから元気な状態に戻れる可能性があることがわかってきました。フレイルは「介護要らずの人生」を目指すすべての人にとって役立つ、一つの指標になりそうです。

山田 実(やまだ みのる)先生

山田 実(やまだ みのる)先生

2010年京都大学大学院医学研究科助教などを経て、2014年より筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達専攻准教授。専門領域は老年学。研究テーマは高齢者のフレイル予防研究(転倒予防、サルコペニア予防、認知機能低下予防等 )、フレイルの促進因子の調査・メカニズムの検証(疫学調査)など。理学療法士として医療機関に勤務中、介護予防事業にかかわり、この分野に興味を持つ。日本老年医学会、日本体力医学学会などに所属。日本転倒予防学会理事。

フレイルとは「要介護」になるリスクが高まった状態

フレイルの多面性

対策すれば回復し、「要介護」を回避できる
フレイルとは健常な状態と介護の必要な状態の間にある「移行状態」のことをいい、「frailty」(弱さ・虚弱の意味)という英語から派生する造語です。フレイルは「心」「体」「社会性」の3つの要素が相互に関係し合って、心身が衰え始めている状態。そのまま放置すると要介護状態に移行しやすい反面、早期に発見し適切な対策をすれば再び健康な状態に戻れることがわかってきました。健康寿命を伸ばし、介護知らずの人生を送るために、まずはフレイルの予防、そして改善を目指した対策をすることが、今後ますます注目されそうです。

フレイルのリスク知らぬ間に進行し、要介護状態へ移行

要介護?まさか私が?

「まさか自分が」と思う人、無関心な人ほど要注意
山田先生が行った、〈65歳以上・約6000人を対象とした調査〉では、フレイルと診断された人の約3割が2年以内に要介護状態となりました。高血圧、糖尿病などの持病がある、ないかかわらず、「そんな簡単に要介護状態にはならない」と思っている人は意外と多いもの。しかし、65歳以上になれば、10年後に要介護認定を受ける人の割合は約5割に達します。介護は明日から始まるかもしれない身近な問題なのです。フレイルは要介護認定を受けるリスクを測る、一つの有効な指標といえます。フレイルであるかどうかをチェックし、もしフレイルであれば、そのままにせず、必要な改善策をとることが大切です

フレイルチェックリスト
3つ以上該当すればフレイルの可能性あり

フレイルの診断基準はまだ確立していませんが、山田先生は次の5つの質問項目のうち、3つが該当すれば、フレイルの可能性があるという新たな診断基準を提案しています。早速チェックして、該当するようなら、次ページに紹介する予防法を参考に、対策を始めましょう。

チェックリストチェック
  • 6ヵ月間で2~3kgの体重減少がありましたか?
    はいいいえ
  • 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
    はいいいえ
  • ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか?
    はいいいえ
  • 5分前のことが思い出せますか?
    はいいいえ
  • (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがしますか?
    はいいいえ
治療法、予防法で大切なことは

治療法、予防法で大切なことは

女性とフレイル実は男性より多い女性の「閉じこもり」

フレイルを引き起こす要因の一つに「社会性の欠如」があります。社会とのかかわりがなくなり、家に引きこもりがちになると、心身の衰えが加速するリスクが高まるのです。こういうと「定年退職した男性は家に引きこもりがちになるので、特に男性は注意したほうがよい」と連想するかもしれません。しかしこれは勘違い。山田先生の行った調査で、日本における65歳以上の高齢者はすべての年代で、男性より女性のほうが「閉じこもり」の割合が多いことがわかりました。「女性のほうが社交的で元気」というイメージにとらわれず、男性も女性も意識して社会とのつながりを保つようにしてほしいものです。

フレイルの予防法
運動・食事・社会活動の3要素をバランスよく改善

フレイルの原因となる3つの要素をそれぞれ改善することが大切です。ずっと続けられるように楽しみながら取り組むことを心がけましょう。

運 動最終目標は1日8000歩。まずは1ヵ月に500歩ずつ増やす

1ヶ月に500歩ずつ増やす

フレイルを予防として最も簡便なのは歩くことです。目標は1日8000~1万歩といわれますが、1日3000歩くらいしか歩いていない人がいきなり8000歩も歩くのはさすがに無理。まずは、1ヵ月ごとに1日500歩ずつ増やすことを目標にしてください。500歩というと目安は5分。朝1分、昼2分、夕方2分と1日の中で振り分けてもいいでしょう。運動は、継続することが重要なので、無理のないように生活に組み込んでいきましょう

運 動弱った筋肉を鍛えるには適度な負荷も必要

インターバル歩行

弱ってしまった筋肉を鍛えるには、歩くだけでは物足りません。そんなときは「インターバル歩行」に挑戦。これは「早歩き3分→普通歩き3分」を15分ほど繰り返す歩き方。大股歩き、膝曲げ歩きなどの応用も可能です。歩くのが辛い人は、座った状態で足踏みを5分続ける、または固定された机などにつかまって、腰を半分だけおろすスクワットを何度か繰り返すなどの運動もおすすめ。体が弱っている人は、医療機関で運動に取り組んでも問題ないか相談し、家族が見守っている状態で行うようにしてください。

食 事食べやすい食品からたんぱく質を摂る

たんぱく質補給に便利な食品

日本の高齢者の食事はたんぱく質が不足気味。たんぱく質は筋肉のもとになるので、不足するとフレイルにつながります。目標摂取量は1日50~60g。肉、魚、大豆、卵などに多く含まれますが、なるべく食べやすい食品から取りたいもの。たとえば納豆1パックとほぼ同じ量のたんぱく質が、プリン1個、バニラアイスクリーム1個でも摂取できます。食品の成分表示を見る習慣をつけ、たんぱく質が多くて食べやすい食品を探すのもいいでしょう。

社会活動町内会や趣味のサークルに積極的に参加

社会活動の例

近所を散歩するとか、公園で立ち話をするなどの日常的な人とのかかわりだけでなく、町内会やボランティア活動、趣味のサークル活動への参加など、主体的に地域社会にかかわる活動がフレイル予防に効果的。社会の一員として役割を果たしながら、そこで生まれる人とのかかわりを楽しむことが、心身の健康につながります。

【まとめ】
元気な状態と介護が必要な状態の中間にフレイルと呼ばれる状態があることがわかりました。心身の衰えが加速する危険性が高まっていますが、きちんと対策をすれば元気な状態に戻れる可能性もある状態です。まずはフレイルとは何かを知り、フレイル予防を始めることが、介護知らずの人生を送るための第一歩です。

イラスト/本田葉子

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