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【第6回】尿病
(監修:菅原 正弘先生)

糖尿病とは、血糖値が高い状態が持続する病気です。高齢になると、血糖を下げるホルモン「インスリン」の働きが悪くなり、糖尿病になりやすくなります。自覚症状が出にくい病気なので、高齢の場合、異常があっても「年齢のせいかな?」と見過ごすことも多くなります。年に1回は健診を受診し、血糖値をチェックし、糖尿病の早期発見・早期治療を心がけることが大切です。

菅原 正弘(すがわら まさひろ)先生

菅原 正弘(すがわら まさひろ)先生

1980年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学医学部付属病院にて糖尿病、リウマチ、膠原病などの内科診療に従事。1993年菅原医院にて診療開始。2001年度日本臨床内科医学会長賞受賞。2008年度日本糖尿病協会年次集会会長。日本内科学会、日本リウマチ学会、日本糖尿病学会評議員。著書に「40歳からの糖尿病との上手な付き合い方」(中経出版、2012年)、「よくわかるメタボリックシンドローム脱出法」(講談社、2008年)などがある。

糖尿病とは?
予備軍も含めると2050万人、高齢になるほど発症率が高まる

様々な合併症を引き起こし、寿命を縮めてしまう

糖尿病とはインスリンの作用が弱まり、血液中の血糖値が高い状態が持続する状態。放置すると様々な合併症を引き起こします。糖尿病には生活習慣と関係のない1型糖尿病、生活習慣などに起因する2型糖尿病などいくつか種類がありますが、日本の糖尿病患者の約95%が2型糖尿病です。

生活習慣の欧米化により、日本の糖尿病患者はここ50年で35倍と急増。2012年の厚生労働省の報告によると、「糖尿病」と「糖尿病予備軍」の合計は2050万人とされています。高齢になるとインスリンの働きが鈍くなることや、今までの生活習慣の積み重ねなどにより、60~70代にかけて糖尿病の発症率は急激に増えます。糖尿病患者の6割は高齢者です。糖尿病を発症すると、日本人の平均寿命より男性は9年、女性は13年短命になるという統計もあります。発症の予防や、早期からの対応が重要です。

糖尿病の原因メタボリックシンドロームが端緒に

運動不足や過食による肥満を解消し、ドミノ倒しを食い止めて

運動不足や過食による肥満

糖尿病の一番の原因は運動不足や過食による肥満です。特に元凶となるのが「内臓脂肪の蓄積」、いわゆるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)です。対策をしないでいると脂肪肝、肝機能障害から始まり、脂質異常症、高血圧、食後高血糖などへと移行し、50代~70代には糖尿病や心筋梗塞、脳卒中などの深刻な病気を引き起こします。

このようにメタボの進行を放置することで、様々な生活習慣病がドミノ倒しのように連鎖し、最終的には死につながる病気を招く現象を「メタボリックドミノ」といいます。健康診断でメタボと診断された人は、運動不足や過食をはじめ、睡眠不足、過度の飲酒、喫煙、過度のストレスなどの生活習慣を一日も早く解消し、この流れを食い止める必要があります。それが糖尿病予防にもつながります。

高インスリン血症とは?
食べ過ぎが引き起こすインスリンの過剰分泌

空腹時血糖値が正常でも食後2時間の血糖値を検査して

もしかして糖尿病予備軍?

健康な人は、食べた後すぐにインスリンの分泌があり、血糖値は低下します。ところが、食べ過ぎや運動不足などで内臓脂肪が増えると、そこからインスリンの働きを弱めるホルモンが分泌されるため、インスリンの働きが弱まり(インスリン抵抗性といいます)、血糖値が上がります。すると、膵臓はインスリンの分泌量を増やし、血糖値を下げようとして、インスリンが過剰に分泌され高インスリン血症の状態になります。

健康診断では空腹時の血糖値を調べ、126mg/dl未満であれば糖尿病でないとされますが、そこで安心してはダメ。空腹血糖値110mg/dl以上は境界型糖尿病です。境界型糖尿病は「高インスリン血症」を呈している場合が多く、動脈硬化による心筋酵素やがん、アルツハイマー病など、さまざまな病気の原因に。健康な人に比べて、死亡率が2倍に跳ね上がるという調査もあります。空腹時血糖値が正常でも、メタボなどの危険要素があれば、食後血糖値の検査をしてみましょう。食後血糖値が140mg/dl以上あれば、糖代謝の異常が疑われます。

糖尿病の合併症腎症、網膜症などに加えがんや認知症も関係

高齢になって発症するほど合併症のリスクは低くなる

合併症

糖尿病は合併症が怖い病気です。代表的な合併症は足裏のしびれなどから始る「神経障害」、尿に蛋白が漏れ出し、腎臓の機能が低下し、最悪の場合人工透析が必要になる「腎症」、目の毛細血管が破れて網膜に出血を起こす「網膜症」、そして高血糖による動脈硬化の進行で起こる「心筋梗塞や脳梗塞」があげられます。糖尿病を発症してから25年後の合併症の発生率は、神経障害が50%、網膜症が40%、腎症が30%となっています。糖尿病の期間が長いほど、合併症の発生率も高くなるため、70代、80代など高齢になって初めて糖尿病を発症した場合、合併症のリスクは比較的低くなります。
最近、糖尿病の合併症としてがん、認知症、骨粗しょう症、歯周病なども起こることがわかってきました。

治療開始の目安血糖値やHbA1cの数値から診断

自覚症状から発覚することはほとんどない

糖尿病の代表的な自覚症状は、「尿の量が多くなる」「のどが渇いて水をたくさん飲む」「体重が減る」「疲れやすくなる」などです。しかし、これらの症状はかなり進行しないと自覚しにくく、現実的には自覚症状から糖尿病が発覚することはあまりありません。定期的な健康診断で、血糖値、HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)などの数値から診断されることがほとんどです。糖尿病の早期発見のために、1年に1回は必ず定期検診を受けましょう。

血糖値やHbA1cの数値が正常の範囲でも、下記の数値が高い場合、「糖尿病予備軍」の可能性があります。適度な運動やダイエットなどをスタートし、健康寿命を伸ばすことを心がけましょう。

1) BMI=25以上 (BMI=体重kg/身長m×身長m)
2) 脂質 LDLコレステロール120mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満、トリグリセライド150mg/dl以上
3) 血圧 収縮期血圧130mgHg以上、拡張期血圧85mgHg以上

糖尿病の診断


①②のいずれか一つでも当てはまる場合、「糖尿病型」と診断され、二つ以上満たすと「糖尿病」と診断されます。一つであっても、糖尿病の典型的な症状のある場合や糖尿病の網膜症のある場合も糖尿病と診断されます

治療法、予防法で大切なことは

治療法、予防法で大切なことは

糖尿病の治療法食事と運動でのコントロールが困難なら薬も活用

糖尿病治療の2本柱は食事療法と運動療法です。まずはこの2つからスタートし、2~3カ月経過しても、血糖値のコントロールができない場合、薬物治療をスタートします。

食事療法:必要なカロリーに基づきバランスよく

肥満のある糖尿病の食事療法は一言でいえば「ビタミン、ミネラル、たんぱく質、カルシウムなどを不足させずに、摂取カロリーを減らすこと」です。1日に必要なエネルギー量の目安は下記です。

1日に必要なエネルギー量=標準体重*1×身体活動量*2
  • *1 標準体重(㎏)=身長(m)×身長(m)×22
  • *2 身体活動量(=標準体重1㎏あたり)の目安
  • ・軽労作(デスクワーク主体、主婦業など)…25~30kcal
  • ・普通の労作(立ち仕事が多い)…30~35kcal
  • ・重い労作(力仕事が多い)…35kcal~

例)標準体重が55kg、身体活動量が軽労作の場合
1日に必要なエネルギー量=55×25(または30)=1,375kcal(または1,650kcal)

メニューを考える際は、下記のことに気を付けましょう。

  • 炭水化物は減らすが絶たない、最低でも毎食ご飯、軽く1膳またはパン1枚食べる
  • 納豆や豆腐などの植物性たんぱく質や魚料理を増やす。
  • 牛乳ないしヨーグルトは1日1杯(200ml)
  • 野菜は一日300g以上
  • 果物はとっても1日りんごならご半分程度ないしバナナなら1本
  • 夕食の過食をしない
  • 夕食後の飲食をしない
  • 油料理は1日2品にする(バターなどの調味料も含めて)
  • 間食は1日1回以下にする

運動療法:1日30分×週3~5回の有酸素運動

40歳以降、太りやすくなるのはなぜでしょうか? それは筋肉の量が減り、消費エネルギーが減り、基礎代謝が落ちるためです。運動をして筋肉量が増えれば、糖の消費が増え、基礎代謝が上がり、体重が減ります。また食後に運動すれば食後の高血糖を抑える効果があり、運動を継続することでインスリンの働きもよくなります。

糖尿病に効果があるのは、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動です。息切れしないでできる運動を1回最低15分以上、1日30分以上、週3~5回行います。誰でもできる運動として速足のウォーキングがおすすめ。膝関節痛などで歩けない人はプールの中でのウォーキングがよいでしょう。

高齢でも、定期的なウォーキングなどの運動療法は、動脈硬化の予防、認知機能低下の予防などにも有効で、短時間の運動を繰り返すのがいいとされます。しかし、骨や関節、心臓、肺に疾患がある場合や、糖尿病腎症後期、増殖網膜症などがある場合、運動を避けたほうがいいこともあります。主治医と相談したうえで注意しながら進めてください。

薬の治療:高齢の場合、低血糖になりにくいDPP-4阻害薬の使用が多い

  • 内服薬の種類
  • 1)インスリンの分泌を増やす
  • ■スルホルニ尿素薬(SU薬)
  • ■速効型インスリン分泌促進薬
  • ■DPP-4阻害薬(食後のインスリン分泌を増やす)
  • 2)インスリンの働きをよくする
  • ■ビグアナイド薬(肝臓での糖新生の抑制)
  • ■チアゾリジン薬(骨格筋・肝臓でのインスリン感受性の改善)
  • 3)腸管からの糖の吸収を早くする
  • ■α-グルコシダーゼ阻害薬(炭水化物の吸収遅延・食後高血糖の改善)
  • ■SGLT2阻害薬(腎での再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進)

2型糖尿病で食事療法と運動療法を2~3カ月続けても、血糖コントロールがうまくいかない場合、薬の治療を行います。糖尿病の進行度、肥満の程度やインスリン分泌量、他の持病の有無、年齢などから使用する薬が決められます。

薬による治療中は「低血糖」に注意が必要です。低血糖とは薬の量が多すぎる、食事の量が少ない、運動量が多いなどが原因で、血糖値が極端に低くなってしまう現象です。最初は強い空腹感から始まり、冷や汗、手指のふるえ、動悸、不安感などがみられます。さらに血糖値が下がると、眠気、脱力感、めまい、集中力の低下がみられ、重症になるとけいれん、意識消失、昏睡など命の危険に陥ることも。低血糖の症状があらわれたら、すぐにブドウ糖を摂取します。手元にない場合は、ジュースなどの甘い飲み物でも可です。

薬の治療に伴う低血糖は特に75歳以上の高齢者に起こりやすいといわれます。しかも本人の自覚症状が少なく、目のかすみや倦怠感などの非典型的な症状が多いため、特に注意が必要です。高齢者の場合、低血糖がおこりにくいことから、DPP-4阻害薬がよく使われます。

糖尿病の予防法肥満や運動不足を解消し、食生活も気を付ける

元気で充実した人生を歩むために

糖尿病の予防は生活習慣病予防です。糖尿病を予防することは、脳卒中、心臓病、がん、認知症などの予防につながります。それが健康寿命を引き延ばすことになり、元気で充実した人生を送る近道になるのです。

【まとめ】
糖尿病は運動不足や過食による肥満などで、徐々に発症リスクが高まっていく生活習慣病です。発症以前から食事療法や運動などで予防に努めることが大切です。また近年は腎症、網膜症、神経障害などの他に、がんや認知症、骨粗しょう症なども合併しやすいことがわかってきました。自覚症状が出にくい病気なので、深刻な状況になる前に定期的な健康診断を通して早期発見・早期治療することが重要です。

イラスト/本田葉子

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