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【第9回】房細動(高齢者に多い不整脈)
(監修:住吉 正孝先生)

心房細動とは、文字通り心臓の心房という部屋が細かくふるえるように動くことで起こる不整脈。加齢とともに増える高齢者に多い病気です。心房の血流がよどみ、血栓ができ、脳梗塞の原因になることが深刻な問題。自覚症状がなく、気づかないこともありますが、75歳以上で心房細動だとわかったら、抗凝固薬を飲むなどして、脳梗塞予防に努めることが大切です

住吉 正孝(すみよし まさたか)先生

住吉 正孝(すみよし まさたか)先生

順天堂大学医学部附属練馬病院循環器内科教授。1981年岩手医科大学卒業。循環器疾患のなかでも不整脈を専門にしており、特に失神や心臓性突発死の予防に力を入れている。日本内科学会認定内科医、日本循環器学会循環器専門医、日本不整脈心電学会認定専門医・評議員、など。

心房細動の原因と症状心房が細かく震えることで起こる不整脈

■心房が震えるように動いてしまう

心臓は4つの部屋に分かれています。上の2つの部屋を心房といい、下の2つの部屋を心室といいます。心房細動とは、通常の電気信号では心房の興奮がおさまらず、通常1分間に60~100回のところを350回以上もの回数で小刻みに動いてしまい、正しい収縮と拡張ができなくなる状態のことをいいます。

■高齢になるほど増える

心房細動は加齢とともに増加します。患者の平均年齢は75歳で、患者の84%が65歳以上です。男性のほうが多く、80歳代で男性は4.4%、女性は2.2%の割合で発症するという統計データもあります。加齢のほかの原因としては高血圧、糖尿病、心臓病などの持病がある場合や、ストレスや不規則な生活習慣、肥満によっても起こりやすくなります。

■3~4割は無症状で見逃されることも多い

心房細動は慢性化していると自覚症状がないことが多く、健康診断などでたまたま見つかることもよくあります。自覚症状としては息切れ、めまい、胸苦しさなどがみられます。心房収縮がなくなり、脈が不規則で速くなって心臓から出る血液量が約20%減少するためです。

心房細動と脳梗塞の関係脳梗塞の約3割は心房細動が原因

ガーン

心房細動が続くと、心房に血液の流れがよどみ、血栓(血液のかたまり)ができやすくなります。血栓が脳にとび、脳の主要な血管がつまると脳梗塞を引き起こします。脳梗塞患者のうち、約30%は心房細動が原因だといわれています。これを心原性脳梗塞といいます。元プロ野球選手・プロ野球監督の長嶋茂雄さん、元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシムさん、総理大臣だった小渕恵三さんなど、著名人でも心原性脳梗塞に見舞われた方は少なくありません。
心房細動がわかったら、脳梗塞の予防がとても大事になります。

リスク評価のスコア表をチェック脳梗塞発症リスクを数字で見える化

心房細動がある人がどれだけ脳梗塞を発症するリスクが高いかがわかるスコア表があります。これによって脳梗塞のリスクをチェックしましょう。グラフを見るとすべてに当てはまる場合、2割近い人が1年以内に脳卒中を起こすことがわかり、十分な注意が必要です。

CHADS2スコア
CHADS2スコアと脳卒中の年間発症率
対象:ワルファリンが投与されていなかった非弁膜症性心房細動(*)患者1773例(65-95歳)
方法:平均1.2年間、対象患者の脳梗塞発症率を追跡
(*)非弁膜症性心房細動とは僧房弁狭窄症と人工弁置換術後の患者を除外した、ごく一般的な心房細動のこと。
治療法、予防法で大切なことは

治療法、予防法で大切なことは

心房細動の鑑別方法長時間心電図で突き止めることも

■心電図検査の鑑別がキホン

心房細動の自覚症状には個人差があります。発作的な心房細動では動悸、息切れ、呼吸困難などの自覚症状が起きやすいといわれています。高齢者は慢性的で無症状のことが多く、定期検診などで初めて見つかる場合もあります。いずれにせよ心房細動であるかどうかは心電図検査によって診断します。

■判然としない場合、長時間心電図をとることも

心房細動は24時間持続しているわけではなく、明け方だけ、夜中だけ、飲酒したときだけなど一時的に発生していることも多くあります。このため24時間続けて心電図を記録するホルター心電図による検査が行われることも。最近では数週間、心電図をチェックできる体外式心電図モニターも用いられます。日本では脳梗塞を起こした患者で、心房細動の疑いがある場合、体内に小さな機械を埋め込んで長期間継続して心電図を調べることもあります。

心房細動の治療心房細動の治療には2つのプロセスがあります
「抗凝固療法」「心房細動そのものの治療」です。

1.抗凝固療法

2.心房細動そのものの治療

概要 向いている人 注意点
薬(抗不整脈薬など) 心房細動の発症を抑えたり、心房細動が持続しても脈が速くならないようにして症状の改善を目指す。 すべての患者が対象。 副作用に注意!
生活習慣・生活習慣病対策 糖尿病や高血圧を合併している場合、それぞれの病気の治療が心房細動や脳梗塞発症リスクの回避に有効。特に血圧のコントロールは大事。睡眠不足やストレス、飲酒、肥満が原因である場合、原因を取り除くよう努めることも必要。 今まで脳梗塞の既往症や心臓の持病などがない場合も含め、すべての患者。 脳梗塞のリスクを回避できるわけではない。
カテーテル治療 カテーテル治療により、肺静脈を隔離することで、完治が望める場合もある。 50~60代の比較的若い人。かつ動悸などの症状が強く、日常生活に支障がある人。 合併症のリスクがあるため、高齢者にはおすすめできない。

高齢者は抗凝固薬の服用が一般的

■一番大事なのは脳梗塞の予防

心房細動であることがわかったら、一番注意が必要なのは脳梗塞の予防です。適応があれば抗凝固薬を服用しましょう。心房細動そのものの治療法には薬、生活習慣や生活習慣病対策、カテーテル治療がありますが、年齢や症状、合併症の有無によってそれぞれの治療法を組み合わせて行います。

■症状がなくても薬は飲み続ける

高齢者の場合、抗凝固薬を服用するケースが多くなります。しかし症状がなく、危機感が乏しいと、飲み続けることが面倒になり、やめてしまう人が少なくありません。心房細動による脳梗塞は比較的重くなりやすく、影響は深刻。そのリスクを改めて認識し、飲み続けることが何より大切です。

心房細動の予防高血圧、糖尿病対策も予防につながる

それでもなってしまったら

脳梗塞予防が何より大切!

【まとめ】
高齢者に多い心房細動は、その3~4割が無症状のため、健康診断や心電図検査などで見つかることもあります。心房細動によって心臓の血流がよどみ、血のかたまりができやすくなるため、脳梗塞を引き起こすリスクが高まります。血液の抗凝固薬を服用するなど、継続した対策が必要です。

イラスト/本田葉子

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