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【第10回】ーキンソン病
(監修:頼高 朝子先生)

動作が遅くなる、手足がふるえるなどの運動症状がみられるパーキンソン病。脳内のドーパミンという物質の減少によって起こりますが、ドーパミンは年齢を重ねるごとに減っていくので、高齢になるほど発症しやすくなります。似たような病気が多いので、気になる症状がある場合はこの病気を専門とする神経内科を受診し、正確な診断を受けましょう。その後は適切な薬によって治療することが大切です。

頼高 朝子(よりたか あさこ)先生

頼高 朝子(よりたか あさこ)先生

順天堂大学医学部准教授。1987年福島県立医科大学医学部卒、1988年順天堂大学大学院医科学専攻(神経学)修了。臨床神経学、なかでもパーキンソン病を専門とし、多くの症例に対し、治療にあたる。日本内科学会内科専門医、日本神経学会認定神経内科専門医、日本神経学会指導医など。パーキンソン病の女性患者を対象とした、体操教室を月1回実施し、自らが講師を務めている。

パーキンソン病の症状
初期は「ふるえ」や「無動」のほか嗅覚低下も

パーキンソン病は運動症状と非運動症状の両方が見られる全身性疾患です。運動症状が主ですが、最近では運動以外の症状にも注目されています。運動以外の症状はあまり知られていませんが、パーキンソン病かどうかを診断する際に重要な目安になります。特に嗅覚の低下は、本人は気づかないことが多い初期の特徴的な症状です。

  • 【運動症状】
  • 動きが遅くなる
  • 手足などの動かせる範囲が狭くなる(無動)
  • 動作をしているときでなく、じっとしているときに起こる手足のふるえ(振戦)
  • 筋肉が硬くなり、手足がスムーズに動かなくなる(固縮)
  • 診察で後方に体を引くとバランスが取れずに倒れてしまう(姿勢反射障害)
散歩中キンモクセイの香りに気づかない夫
  • 【非運動症状】
  • においを感じられない(嗅覚の低下・消失)
  • 便秘、汗をかきやすい(発汗異常)
  • 睡眠中、夢を見ながら体が動く、寝言が大きい(レム睡眠行動異常症)
  • むくみやすい、冷えやすい
  • やる気の低下、疲れやすい、うつ

パーキンソン病の原因脳の神経伝達物質「ドーパミン」の減少

ドーパミンの減少が直接の原因

脳のなかでも中脳の「黒質(こくしつ)」という部分のメラニンを含む神経細胞の変性により、そこで作られる神経伝達物質ドーパミンの量が減少。これにより情報伝達がうまくいかなくなることが原因と考えられています。黒質で作られるドーパミンの量が正常な場合の20%以下にまで低下するとパーキンソン病の症状が現れるといわれます。

遺伝性は5%、非遺伝性の原因は不明

神経細胞内に「α―シヌクレイン(神経細胞に現れるタンパク質)」がたまることがわかっています。原因としては「ミトコンドリア(細胞の中の小器官)の異常」、「酸化的ストレス」などの説がありますが、わかっていません。また遺伝性が全体の5%ほどあり、その場合は10~20代の若いうちに発症することもまれにあります。

加齢により発症しやすくなるのは自然なこと

ドーパミンが作られる脳の「黒質」の神経細胞は加齢によって減少するので、高齢になるほどパーキンソン病の発症率は高くなります。仮に120歳まで生きた場合、ほぼ全員が発症するという仮説もあるほどです。80代など比較的遅く発症した場合、進行が早い場合が多いようです。

性格はまじめ、几帳面、がんこな人が発症しやすい

パーキンソン病は性格がまじめ、几帳面、がんこ、新規探索傾向が低い(新しいものを好まない)人がなりやすい傾向があるといわれています。

パーキンソン病チェックリスト
非運動系の症状、体の痛みにも要注意

パーキンソン病かどうかの自己診断に役立つチェックリストを掲載します。下記のリストの項目が2~3個以上あてはまる場合、パーキンソン病の疑いがあります。パーキンソン病を専門とする神経内科を受診し、詳しく検査してもらいましょう。

チェックリストチェック
鉛筆
  • じっとしていると、手や足がふるえる
  • 歩くときの歩幅が小さくなった
  • 歩くのが遅くなった
  • 歩いていると前のめりになってしまう
  • 着替えがしにくい、着替えに時間がかかるようになった
  • 声が小さくなった、抑揚をつけて話すことができなくなった
  • においを感じにくくなった
  • 便秘がちになった
  • 寝言が大きくなった
  • 腰痛、肩こりなどによる身体の痛みがひどくなった

※腰痛や肩こりの自覚症状がある場合は整形外科を受診してしまい、発見が遅れることがあります。ここにあげたほかの症状と重なるようならパーキンソン病を疑うことも必要です。

治療法、予防法で大切なことは

治療法、予防法で大切なことは

パーキンソン病の診断法診察と問診を基本とし、各種検査でほかの疾患を否定する

どのような症状が見られるかの「診察」と、その症状がいつからどのように起こってきたかの「問診」が基本になります。パーキンソン病なのか、パーキンソン病と似たような症状を示す別の病気なのかを見分けるために、血液検査以外に以下のような検査を行うこともあります。

主な検査法とその目的

検査名 概要・目的
MRI 脳梗塞などの病気を否定するために行う。
MIBG心筋シンチ MIBGという神経伝達物質の心臓へ取り込み状況を調べる。取り込みが正常より低下している場合、パーキンソン病、レビー小体型認知症の可能性が高い。
ダットスキャン 脳の線条体へのドーパミンの取り込み状況を調べる。取り込みが正常より低下している場合、パーキンソン病、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症などの可能性が高い。

パーキンソン病と似た症状を示す病気をまとめて「パーキンソン症候群」といいます。間違えやすく、パーキンソン病の治療薬はあまり効果がないことが多いため、注意が必要です。誤診を防ぐためには、専門医のいる神経内科を受診し、正確な診断を受けることが必要です。

間違えやすい病気(パーキンソン症候群)

  病気の概要 パーキンソン病との区別の仕方
進行性核上性麻痺 パーキンソン病より患者数が少なく、高齢者に多い。病気の初期から転びやすい。目の動きが悪くなるのも特色。 目の動きが悪い。パーキンソン病治療薬にはっきりした効果がない。MIBG心筋シンチは正常。
多系統萎縮症 小脳や脳幹が萎縮する原因不明の疾患。症状はパーキンソン病にかなり似ている。 初期は、MIBG心筋シンチは正常。
本態性振戦 ものを取るなど動作をするときに出やすい手足のふるえ。ふるえ以外の症状はなく、進行もごく軽度。高齢者に多い。 安静時にふるえがない。
ダットスキャンは正常。
薬剤性パーキンソン症候群 向精神薬などの薬の服用によっておこる、手足のふるえ、動きにくさなど。 ダットスキャンは正常。
脳梗塞 手足の動きにくさ(麻痺)、歩きにくさ、転びやすさなど。 MRIで脳梗塞がないかを確認。

パーキンソン病の治療適切な薬の処方が基本。手術療法もある

症状を軽減し、日常生活に支障をきたさないようにすることを目的とした、ドーパミンを補充する薬物療法が基本となります。近年、パーキンソン病の薬は多数開発され、50代~60代で発症しても予後は20~30年と長く、ほぼ平均寿命をまっとうできるほどになりました。

主な薬であるレボドパ製剤は、長く服用を続けると効果が短くなる「ウェリング・オフ」という現象や、レボドパの脳内濃度の変動によって生じる「ジスキネジア」があらわれます。レボドパ以外の薬剤では吐き気、眠気、幻覚などの副作用が生じることもあります。主治医による薬の組み合わせの変更や手術療法などで、こうした問題に対応してもらいます。

主なパーキンソン病の治療薬

  主な効果 副作用・注意点
レボドパ製剤(合剤) レボドパは脳に入るとドーパミンに代わる。ドーパミンを補うために飲む、中心的な治療薬として使われている。 服用期間が5~7年以上と長くなると、作用時間が短くなり服用から2時間ほどで効果が切れてしまう「ウェアリング・オフ」という現象が5割程度発生する。
アゴニスト(ドーパミン受容体刺激薬) ドーパミンを受け止める受容体を刺激して、レボドパの効果を高める。初期からまたは、レボドパと併用して使われる。 麦角系と非麦角系があり、麦角系の大量では心臓弁膜症の副作用がある。非麦角系は眠気、むくみが出やすい。
抗コリン薬 アセチルコリンという脳内の伝達物質の作用を弱め、ドーパミンとのバランスの回復を図る。ふるえなどの症状を改善。 認知機能の低下を招きやすい。若い世代に使われる。
塩酸アマンタジン ドーパミンの放出を促す。ジスキネジア(不随意運動)を抑制する。 幻覚、妄想などが起こりやすい。
マオB阻害薬、
コムト阻害薬、
イストラデフィソン、ゾニサミド
ウェアリング・オフの症状を改善する。 幻覚、妄想などが起こりやすい。
アリセプト(保険適応外) 認知機能、幻覚症状を改善する。 吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状が起こりやすい。
メマンチン(保険適応外) 幻覚、妄想を抑える。 めまい、ふらつき。
抑肝散(漢方・保険適応外) 幻覚、妄想を抑える。 眠気、低カリウム血症。
薬の服用はオーダーメイド

パーキンソン病の治療薬は、進行すると複数の薬を組み合わせることが一般的。また「ウェアリング・オフ」に対しても治療薬が増えてきました。しかしどの薬にも共通した副作用として幻覚や妄想などの症状があらわれることが知られています。高齢になるとレボドパ製剤中心の治療になります。主治医と相談しながら薬の量や種類を調整し、症状の緩和を目指すことが必要です。

脳深部刺激治療(DBS:deep brain stimulation)

脳の深部に電極を留置し、前胸部に植え込んだ刺激装置で高頻度刺激する治療法。異物が体内に入るため、感染や出血のリスクがありますが、著しく薬の服用量を減らすことができます。日本では2004年4月から保険適応が認められました。特殊な技術であるため、限られた医療機関だけで実施されています。

レボドパ・カルビドパ配合経腸用液(LCIG:デュオドーパ®)

胃ろうを作り、小型の携帯注入ポンプと専用のチューブによって、腸に直接レボドパ製剤を16時間にわたり持続投与する治療法。ウェアリング・オフなどにより既存の薬物療法では限界が生じた場合など、進行期のパーキンソン病の治療法として2016年9月から承認され、新たな選択肢として注目を集めています。導入は限られた医療機関だけで実施されています。

パーキンソン病のリハビリ
筋肉量を維持するために毎日コツコツ続けよう

パーキンソン病であっても日常生活を支障なく行うために、リハビリを行うことは非常に重要です。体を動かさないでいれば、病気でなくても筋肉はどんどん弱っていきます。筋肉を維持するために毎日体を動かすことを意識しましょう。リハビリをするかしないかによって発症後の生活の質は大きく変わってきます。太極拳やダンスなどのスポーツもお勧めです。

【まとめ】
パーキンソン病は便秘、嗅覚の低下などの意外な症状もあり、これが早期発見の手がかりになります。似たような病気が多く、正確な診断を受けるには、この病気を専門とする神経内科への受診がおすすめです。50~60代で発症しても、適切な薬を服用し地道なリハビリに取り組めば、寿命を全うできる病気なので、前向きに付き合っていく心構えを持つといいでしょう。

イラスト/本田葉子

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